決算申告とは、一定期間の収支を集計して納める税金を算出し、申告書などの書類を提出することです。税理士に決算申告を依頼することで、経理処理にかかる手間や時間を削減できるというメリットがありますが、費用が気になる方もいらっしゃるでしょう。
決算申告の費用は、税理士に決算申告のみを依頼する場合と、顧問契約を結んでいる場合で異なるため、費用の仕組みや相場を把握しておくことが重要です。
本記事では、決算申告を税理士に依頼する際の費用相場と依頼するメリット・デメリット、信頼できる税理士の選び方、費用を抑えるためのポイントについて詳しく解説します。
税理士の決算申告費用の仕組み
決算申告費用は、税理士への依頼方法によって異なり、依頼方法は大きく次の2つに分けられます。
- 決算申告のみを依頼する
- 顧問契約を結んだ上で決算申告も依頼する
決算申告のみを依頼する場合、基本的に単発(スポット)での依頼となります。一方、顧問契約を結んだ上で決算申告を依頼する場合、顧問料とは別に決算申告の費用が発生します。
なお、一部の税理士事務所では、顧問契約のない企業の決算や確定申告の代行を受け付けない場合もあるため、注意が必要です。
決算申告を税理士に依頼する場合の費用相場
決算申告を税理士に依頼する際の、具体的な相場について確認していきましょう。ここでは、依頼方法別の費用相場と、費用に影響を与える諸条件について解説します。
- 決算申告のみを依頼する場合
- 顧問契約を結んでいる場合
決算申告のみの相場
税理士に決算申告のみを依頼する場合の費用は、会社の規模や売上高・従業員数・取引の件数によって大きく変動します。
法人・個人事業主の年商(年間売上)ごとの、決算申告の費用相場は以下の通りです。
【法人】
- 年商1,000万円未満の場合:費用10万~15万円程度
- 年商1,000万~4,000万円の場合:費用15万~20万円程度
- 年商4,000万~1億円の場合:費用20万~30万円程度
- 年商1億円以上の場合:費用30万~50万円以上
【個人事業主】
- 年商500万円未満の場合:費用7万~10万円程度
- 年商500万~1,000万円の場合:費用10万~15万円程度
費用相場は、法人でおおよそ10万〜30万円ほど、個人事業主は7万~15万円ほどです。
決算申告を代行する際に依頼できる主な業務は、決算書や申告書の作成と、税務署への提出作業です。これらの申告書を作成するには記帳済みのデータが必要となります。
一般的には記帳は自ら行い、決算書の作成のみを依頼するケースが多いですが、年間の記帳代行を受け付けているサービスもあります。
記帳代行から依頼する場合には、追加費用が発生するため、含まれる業務内容を事前に確認しておくことが重要です。
顧問契約を結んでいる場合の相場
顧問契約を結んでいる税理士へ決算申告を依頼する場合、月額の顧問料とは別に、決算申告料が発生することが一般的です。
決算申告費用の目安は、月額顧問料の約4〜6カ月分といわれています。
税理士の顧問料は一律ではなく、企業の規模や従業員数、年商、税理士の訪問回数などの要因で変動します。顧問料の費用相場は、以下の通りです。
- 中小企業:月額2万〜5万円(年間24万〜60万円)ほど
- 大企業:月額5万円~(年間60万円~)
- 個人事業主:月額1万〜3万円(年間12万〜36万円)ほど
税理士と顧問契約を結んでいる場合の決算申告の費用相場は、次の通りです。
- 中小企業:8万~20万円程度
- 大企業:20万円~
- 個人事業主(確定申告):5万~10万円程度
税理士と顧問契約を結んだ上で決算申告を依頼すると、長期的な関係を築けるため企業の財務状況を深く理解してもらいやすく、スムーズな決算処理が期待できます。
決算申告を税理士に依頼するメリット
決算申告には専門知識が必要であるほか、多くの時間と手間がかかります。税理士に決算申告のみを依頼することで、業務の効率化やコスト削減が図れるほか、信頼性の高い申告書の作成が可能になります。
ここでは、決算申告を税理士に依頼する具体的なメリットについて解説します。
- 自分で行うよりも正確に決算申告ができる
- 税理士の署名により、決算申告書の信頼性が向上する
- 時間を節約し、本業に集中できる
自分で行うよりも正確に決算申告ができる
決算申告を自分で行う場合、経理知識が不十分だとミスが発生しやすく、場合によっては税務署からの指摘を受けるリスクもあります。
しかし、税理士に決算申告を依頼することで正確な決算申告ができ、ミスによる追徴課税やペナルティのリスクを軽減できます。
税理士は、税理士法によって定められた国家資格を持つ専門家です。特に、税法の改正や最新の税務情報に対応した適切な申告が期待できるため、安心して決算業務を任せられます。
税理士の署名により、決算申告書の信頼性が向上する
税理士法により、税理士は作成した税務書類に署名および押印をする義務があります。決算申告を税理士に依頼すると、申告書に税理士の署名が加わるため、第三者からの信頼性が向上することもメリットの一つです。
また、金融機関や取引先からの信頼を得やすくなり、融資の審査や取引先との交渉で有利に働くこともあり、事業拡大のチャンスにもつながるでしょう。
時間を節約し、本業に集中できる
決算や申告作業には手間や時間がかかりますが、税理士に依頼することで手間や時間を節約することが可能です。
特に、企業にとっての決算申告の時期は、年末調整やボーナスの計算、期末在庫の評価や棚卸しなど他の業務と重なり、繁忙期となることが想定されます。決算や申告作業を税理士に任せることで負担が軽減され、余裕を持って経営に取り組むことができます。
経営者や経理担当者が申告作業に追われることなく、本業に集中できるようになるため、企業の生産性向上が期待できます。
決算申告のみを税理士に依頼するデメリット
税理士と顧問契約を結ばず、決算申告のみを税理士に依頼することを検討されている方も多いでしょう。決算申告のみを税理士に依頼すると、コスト削減や業務の簡略化につながる一方で、いくつかのデメリットもあるため、理解しておくことが重要です。
ここでは、決算申告のみを依頼するデメリットと、それに対する解決策を解説します。
顧問契約ではないため、経営や節税に関するアドバイスを受けられない
税理士と顧問契約を結んでいる場合、月次の経理状況を把握した上で、適切な経営改善策や節税対策を提案してもらえるため、長期的な利益最大化が期待できます。
しかし、決算申告のみの依頼では、税理士から経営全般や節税に関する継続的なアドバイスを受けることができません。
結果として、機会損失につながるなど経営効率が低下する恐れもあるため、自社の状況に応じて、顧問契約も検討してみると良いでしょう。
会社の取引状況をリアルタイムで把握しにくく、迅速な経理改善が難しい場合がある
税理士に決算申告のみを依頼した場合、経営者として会社の取引状況をリアルタイムで把握することが難しくなることもデメリットといえます。
その結果、経理の課題を見逃しやすく、迅速な改善が求められる場合でも対応が遅れる可能性があります。
特に、取引が多い企業や経理体制の見直しが必要な企業にとっては、顧問契約を結んで定期的にアドバイスを受けることで、経理の効率化や問題解決のスピードが向上しやすくなります。
税理士に決算申告のみを任せるべきか、顧問契約を結ぶべきかの判断基準
税理士と顧問契約を結ぶか、決算・確定申告のみを依頼するかの判断材料として、予算と節税効果や経営アドバイスの兼ね合いを考える必要があります。
顧問契約を結ぶことで、税務の専門家から日々の経営に関するアドバイスや節税の提案を受けられるため、長期的にはコストパフォーマンスが高まる場合があります。
一方、決算・確定申告のみを依頼する場合は、顧問契約よりも費用を抑えられる反面、定期的なサポートや節税策の提案を受けることが難しくなります。
そのため、企業の規模や取引量、経営者の税務に対する知識やリソースの状況を踏まえ、どちらの選択が最適かを検討することが重要です。
決算申告のみを依頼することがおすすめな会社の特徴
売上規模が小さい会社や、決算申告書以外の業務を社内で対応できる会社は、決算申告のみの依頼でも対応できる可能性があります。
コストを最小限に抑えたい場合は、決算・確定申告のみの依頼も一つの選択肢となるでしょう。
ただし、顧問契約を結ぶことで、実行可能な節税策の提案や経営に関するアドバイスを受けられるようになります。特に、節税の余地が大きい企業や経営のアドバイスが必要な場合は、顧問契約のメリットが大きいといえます。
決算申告の際の信頼できる税理士の選び方
決算申告を税理士に依頼する際には、信頼できる税理士を選ぶことが重要です。適切な税理士を選ぶことで、正確な申告と効果的な節税につながり、企業の財務状況の最適化が期待できます。
ここでは、決算申告の際に信頼できる税理士を選ぶための3つのポイントをご紹介します。
- 決算申告の実績が豊富であるか
- コミュニケーションをとりやすく、レスポンスが早いか
- 適切な節税提案をしてくれるか
決算申告の実績が豊富であるか
信頼できる税理士を選ぶためには、過去の実績を確認し、同業種での経験が豊富かどうかを見極めることがポイントです。
決算申告の実績が豊富な税理士は、さまざまな業種や規模の企業の決算に精通しており、複雑な状況にも柔軟に対応できることが期待できます。
特に、自社と同じ業界や規模の企業を多く担当している税理士であれば、業界特有のルールや節税対策にも詳しく、安心して任せることができます。
事前に税理士事務所のホームページや口コミサイトで実績を調べたり、面談時に直接質問して実績の詳細を確認したりすると良いでしょう。
コミュニケーションをとりやすく、レスポンスが早いか
決算申告を税理士に依頼する際には、多くのやり取りが発生するため、コミュニケーションの取りやすさやレスポンスの速さも、信頼できる税理士を選ぶ重要なポイントです。
経営者や担当者が不明点をすぐに解消できるような対応をしてくれる税理士であれば、安心して業務を任せることができ、結果としてスケジュールに沿った決算申告を実現できるでしょう。
そのため、初回の打ち合わせや問い合わせ時の対応などを参考に、相性の良い税理士を選ぶことが大切です。
適切な節税提案をしてくれるか
信頼できる税理士を選ぶためには、顧問契約を結んだ際に税理士がどれだけ企業の財務状況や経営環境を深く理解し、具体的な節税提案をしてくれるかが重要です。
税理士によっては、企業の業種や規模に合わせた効果的な節税対策を提案できる能力に差があるため、定期的な見直しや新しい税制改正への対応も含め、最新の知識を持ち、積極的に節税対策を提案してくれる姿勢があるかどうかを見極めましょう。
決算申告の税理士費用を抑えるためのポイント
税理士に決算申告を依頼する際の費用を効果的に抑えるためには、いくつかのポイントを押さえることが重要です。ここでは、費用を抑えつつ適切な決算申告を実現するためのポイントを2つご紹介します。
決算申告のみを依頼する場合は、日々の記帳をしっかり行う
決算申告申告時に依頼できる業務内容は、税理士事務所によって異なりますが、一般的には記帳代行が含まれないことが多いです。仕訳や記帳の作業を依頼する場合には、追加の費用が発生することもあります。
そのため、決算申告のみを依頼する際には、事前に自社で記帳を済ませておくことで、税理士事務所の作業負担を軽減し、結果的に費用を抑えることが可能です。
顧問契約を結んだ方が、費用対効果が高まることも
長期的に考えた場合、税理士へ決算申告のみを依頼するよりも顧問契約を結んだ方が、費用対効果が高まる可能性があります。
顧問契約では年間を通じて継続的なサポートを受けられるため、決算時に必要な書類作成や申告業務をスムーズに進められます。
また、定期的に相談できる体制を整えることで、税務に関する悩みを早期に解決でき、無駄なコストを抑えることにもつながるでしょう。
さらに、顧問契約によって通常の決算申告だけでなく、経営アドバイスや節税対策も受けられるため、トータルコストの削減が期待できます。
まとめ
税理士へ決算申告を依頼する場合の費用相場は、契約形式や売上規模などの諸条件で次のように異なります。
契約形式 | 法人 | 個人事業主 |
---|---|---|
決算申告(確定申告)のみ | 10万〜30万円程度 | 7万~15万円程度 |
顧問契約を結んだ場合 | 顧問料+8万~20万円程度 | 顧問料+5万~10万円程度 |
なお、ONE共同会計事務所の「カンタン丸投げパック」では、決算書の作成に加えて以下の業務にも対応しています。
- 日々の会計帳簿の記帳
- 法人税申告書の作成
- インボイス対応
- 消費税申告(簡易課税)
- 確定申告書の作成
例えば、売上規模500万〜1,000万円の企業の場合、法人の月額報酬は1.5万円、個人事業主は1万円です。(※別途確定申告報酬がかかります。また、料金は相談回数や取引量・口座数・利益・総資産・従業員数により異なる場合があります。消費税申告は簡易課税を前提としており、原則課税の場合は別途見積もりとなります。)
より費用を抑えたい方には、「顧問契約プラン」もご用意しております。このプランでは、自社で毎月の記帳作業を行うことで、丸投げパックよりも低コストでサービスを利用することが可能です。
企業規模やニーズにあわせて対応いたしますので、税理士に決算申告を依頼することをご検討中の方は、お気軽にご相談ください。