経理の仕事は、日々のデータ入力のほか、毎月の請求書処理や給与計算など、多くの時間と労力を要する業務です。企業の経営者や経理部門の管理者の中には経理の業務負担を軽減したいと考えている方も多いでしょう。
経理代行サービスを活用することで、日常業務の効率化やコスト削減が期待できます。
しかし、経理代行を利用する際に気になるのは、その費用です。経理代行の費用は、依頼する業務内容や依頼先、自社の規模によって異なります。
この記事では、経理代行の費用相場について、記帳代行など依頼内容ごとの料金や依頼先ごとの費用相場、経理代行を選ぶ際に確認すべきポイント、費用を抑える方法について解説します。
【依頼内容別】経理代行の費用相場
経理代行の費用相場は、依頼する業務内容によって異なります。経理代行で依頼できる主な業務として、以下が挙げられます。
代行業務 | 内容 |
---|---|
記帳 | 取引内容を会計ソフトに入力する |
経費精算 | 経費精算ソフトに入力する |
請求書の発行 | 請求書を発行する |
給与計算 | 社員の給与を計算する |
年末調整 | 源泉徴収の計算を行う |
売掛金・買掛金の管理 | 債権や債務の回収状況を管理する |
決算書の作成・申告 | 決算整理仕訳の作成・申告業務を代行する |
ここでは、経理代行で特に需要の高い、次の3つの業務の費用相場について詳しく見ていきましょう。
- 記帳代行
- 給与計算
- 年末調整
記帳代行の相場
記帳業務は、日々の取引を会計データとして集計し、そのデータをもとに会社の営業状況を反映した帳簿を作成する仕事です。
記帳代行の料金体系は、一般的に仕訳数に応じて変動する「従量制」と、月ごとの「月額制」の2種類に分けられます。
従量制では取引件数ごとに料金が決まり、例えば、1取引あたり100円とした場合、100件の記帳で1万円となります。
月額制は企業規模や売上に応じて料金は異なり、個人事業主や中小企業の場合、月額1万〜3万円程度です。年間に換算すると、費用相場は10万~数十万円ほどとなります。
規模の大きな企業の場合は経理処理の件数が増えるため、月額費用で10万~数十万円、年額で100万~数百万円に達することもあります。
記帳代行は、税理士の他にそれを生業としている法人などにも依頼することが可能です。ただし、税務申告や税務相談は「税理士の独占業務」となっているため、確定申告や決算など税務に関連する業務もあわせて依頼したい場合は、税理士に任せるとスムーズです。
給与計算の相場
給与計算では、従業員ごとの出退勤データを確認し、残業時間や保険料などの計算を行います。
給与計算代行の相場は、従業員一人あたり1,000~2,000円程度です。
残業が多い企業や、賞与計算が必要な場合などは計算が複雑になることから、費用が増える可能性があります。
代行業者によっては、基本料金や初期設定費用がかかる場合や、オプションの内容が異なることもあるため、依頼前に詳細を確認することが重要です。
なお、給与計算は特定の資格を持つ人だけが行う独占業務ではないため、税理士・社会保険労務士のどちらにでも代行を依頼することが可能です。
年末調整の相場
年末調整業務の代行は、税理士のみが行える独占業務です。
年末調整代行の料金相場は、基本料金が1万~3万円程度、さらに従業員一人につき500~2,000円程度が加算されるケースが一般的です。
ただし、依頼する業務内容や作業量によって料金は異なるため、具体的な費用を知りたい場合は、税理士事務所に見積もりを依頼すると良いでしょう。
決算書の作成・申告の代行費用の相場については、こちらを併せてご覧ください。
関連記事:決算申告を税理士に依頼する費用相場は?税理士の選び方や費用を抑えるポイント
【依頼先別】経理代行の費用相場と特徴
経理代行の費用相場は、依頼先によっても異なります。主な依頼先として、以下が挙げられます。
- 税理士事務所
- 経理代行業者・アウトソーシング会社
ここでは、それぞれの依頼先の費用相場と特徴やメリットについてご紹介します。
税理士事務所へ依頼する場合
経理代行の依頼先として一般的なのは、税理士事務所です。税理士事務所に記帳業務など経理代行を依頼する場合、通常は継続的な顧問契約を結び、月額顧問料を支払う形式がとられます。
記帳代行を含む月額顧問料の相場は、以下の通りです。
- 個人事業主:1万〜3万円程度
- 中小企業:数万円程度
- 大企業:数万~数十万円
税理士事務所を利用するメリットは、税理士は税務の専門家であり、契約内容によっては帳簿作成だけでなく、支払い管理・給与計算・決算申告・税務相談まで一貫して依頼できることです。
中でも、決算申告や年末調整業務は税理士のみが対応できる独占業務であることから、これらも含めて依頼する場合には税理士事務所に任せると効率的です。
また、税理士に依頼することで、法律や税制の改正に対応した正確な処理が行えるため、法令遵守を確保しつつ経理業務の効率化が期待できます。
特に小規模企業や個人事業主は、限られたリソースで経営を行っていることが多いため、経理業務の負担軽減は重要です。税理士事務所に依頼することで、本業に専念できる時間を確保できるだけでなく、専門家の知見を活かした経営改善のアドバイスを受けることが可能です。
経理代行業者・アウトソーシング会社へ依頼する場合
経理代行業者やアウトソーシング会社とは、記帳代行を専門に行う業者であり、アシスタントサービスとも呼ばれます。
経理代行業者・アウトソーシング会社へ経理代行を依頼する場合の費用相場は、月の仕訳数が100〜250件の場合、月額6,000~2万円程度です。
特急作業や証憑書類のファイリング、部門別記帳が必要な場合は、追加料金が発生することがあります。
経理代行業者やアウトソーシング会社は、税理士事務所に比べて費用が安価ですが、経理代行サービスが取り扱う業務は経理業務や事務業務に限定されます。
税務に関する相談は税理士のみが対応できると法律で定められており、資格を持たない者が税務相談に応じると、有償無償にかかわらず罰則が科されます。
【目的・企業規模別】経理代行の費用相場
経理代行サービスの費用は、企業の規模や依頼する目的によって異なります。
以下は、小規模・ベンチャー企業、中小・中堅企業、大手企業の3つのカテゴリ別の、経理代行に依頼する目的と費用相場です。自社が該当する企業規模や目的の相場を参考にしてください。
小規模・ベンチャー企業 | 中小・中堅企業 | 大手企業 | |
---|---|---|---|
依頼する目的 | 特定の業務のみをアウトソーシングしたい | 経理業務全般をアウトソーシングしたい | 膨大な経理業務をアウトソーシングしたい |
費用相場 | 1万~3万円程度/月 | 数万~数十万円/月 | 数十万円~/月 |
小規模・ベンチャー企業の場合、記帳代行や経費精算など、特定の業務のみをアウトソーシングすることが一般的です。費用相場は、月額1万~3万円ほどです。
中小・中堅企業は、経理業務全般をアウトソーシングすることが多く、月額数万~数十万円程度が相場です。
大手企業では膨大な量の経理業務をアウトソーシングするため、より大規模な対応が必要です。業務量が多く、複雑な処理が求められるため、費用相場は月額数十万円以上になることが一般的です。
このように、経理代行の費用は企業の規模や業務の範囲に応じて変動するため、ニーズに合わせて、適切なサービスを選ぶことが重要です。
経理業務の費用を相場より安く抑えるためのポイント
経理業務を外注する際に費用を抑えるためには、いくつかのポイントがあります。ここでは、経理代行サービスの費用を相場よりも安く抑えるための次の3つのポイントをご紹介します。
- 提出する資料を整理しておく
- 依頼する時期には余裕をもつ
- パッケージ化されたサービスの利用を検討する
提出する資料を整理しておく
経理代行を依頼する際、提出する資料の整理状況が料金に影響することがあります。
例えば、領収書・請求書・出納帳・勤怠実績などの資料が整理されていない場合、振り分けから対応する必要があり、その分の追加費用が発生します。
コストを抑えるためには、提出する資料を月ごとや項目ごとにファイリングし、すぐに参照できる状態に整えておくことが重要です。
依頼する時期には余裕をもつ
年末調整や決算申告など期限のある業務は依頼が遅れると、代行業者に大きな負担がかかり、特急料金が追加されることがあります。
そのため、期限のある業務の場合は早めに手続きを行い、余裕を持って依頼することがポイントです。依頼時期に余裕をもつことで、追加料金を避け、コストを最小限に抑えられます。
パッケージ化されたサービスの利用を検討する
経理業務全般の代行依頼する場合、記帳業務だけでなく、請求書発行、支払い・振込、給与計算などの基本的な業務を含むパッケージ化されたサービスを利用することも検討すると良いでしょう。
業務ごとに料金が設定されているサービスもありますが、複数の個別サービスを組み合わせるよりも、パッケージ化されたものの方がコスト面でメリットがあることが多いです。
代行業者によってパッケージの内容は異なりますが、一般的な相場は月額3万~5万円です。仕訳件数や従業員数、希望する納期によっても料金が変動するため、契約前に詳細を確認しましょう。
経理代行を選ぶ際に、費用とあわせて確認すべき点
適切な経理代行業者選びは、業務の効率化やコスト削減だけでなく、企業の運営におけるリスク管理にも大きく関わります。そのため、経理代行サービスを選ぶ際は、費用だけでなく、さまざまな要素を確認する必要があります。
ここでは、経理代行サービスを選ぶ際に費用以外で確認すべき、以下の4つのポイントについて詳しく解説します。
- 依頼する業務範囲を明確にする
- サービスの品質や信頼性の高さで選ぶ
- 情報管理・セキュリティ対策がされているかを確認する
- インボイス制度への対応可否を確認する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
依頼する業務範囲を明確にする
経理代行サービスを依頼する前に、自社が必要とする業務範囲を明確にしておくことが重要です。業務範囲が曖昧な場合、契約後に追加料金が発生することや、必要なサービスを十分に受けられない場合があります。
例えば、記帳代行のみを依頼したものの、実際には支払管理や経費精算も必要だった場合、後から追加で契約をしなければならず、その分費用が増えることがあります。反対に、不要な業務まで含めて依頼してしまうと、無駄なコストが発生してしまいます。
初期の費用見積もりと最終的な請求額に差異が生じないよう、業務範囲を詳細に確認し、自社のニーズに合わせた選定先やプランを選ぶことが大切です。
サービスの品質や信頼性の高さで選ぶ
経理業務は企業の財務状況に直結するため、正確かつ信頼性の高いサービスを利用する必要があります。そのため、経理代行業者を選ぶ際には、サービスの品質や信頼性を判断基準とすると良いでしょう。
過去の実績やクライアントの評価を確認することで、そのサービスの信頼性を測ることができます。
情報管理・セキュリティ対策がされているかを確認する
経理業務では多くの機密情報が取り扱われるため、依頼先の情報管理体制や、実施しているセキュリティ対策も確認する必要があります。
情報漏洩やデータの不正アクセスを防ぐため、依頼先がどのようなセキュリティポリシーを持っているかを事前に確認しましょう。
また、データバックアップの体制や、万が一のトラブル発生時の対処策についても確認しておくことで、情報漏洩やデータ損失のリスクを最小限に抑えられます。
インボイス制度への対応可否を確認する
2023年10月1日から開始したインボイス制度により、経理業務の管理が複雑になっており、正確な請求書の発行や取引の記録が求められています。そのため、依頼先を選定する際には、インボイス制度に対応しているかどうかも確認することが不可欠です。
インボイス制度とは、消費税の仕入税額控除の方法の一つであり、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみが仕入税額控除の対象となる仕組みです。
インボイス制度に対応した業者であれば、正確な請求書の発行や、必要な情報の確実な記録・管理が期待できます。税務調査や監査においてもスムーズに対応できるため、インボイス制度への適応が求められる昨今では、特に重要なチェックポイントといえます。
経理代行を活用することで期待できる費用削減効果
経理代行を活用することで、企業や事業主は費用削減効果が期待できます。具体的な効果は、以下の通りです。
- 人件費・システム導入費などのコスト削減
- 業務量の変動に柔軟に対応できる
- 高品質な経理業務を安定的に行える
- 本業に集中しやすくなる
経理代行を利用することで、社内での経理担当者の人件費やシステム導入費用を削減できます。また、業務量の変動に応じて柔軟にサービスを調整できるため、必要に応じた経理処理が可能になります。
さらに、専門家に依頼することで経理業務の品質を高め、自社の本業に専念できる環境を整えられることも大きなメリットです。
まとめ
経理代行サービスを利用することで、業務の効率化やコスト削減が期待できます。経理代行の費用相場は、依頼する業務内容・依頼先・会社の規模などの諸条件によって異なるため、自社のニーズや予算に合ったサービスを選ぶことが重要です。
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