欠損金の繰越しと繰戻し還付

「会社設立シリーズⅡ ~設立の手続き~」において、青色申告の承認手続きをしましょうと記載しました。そこで、今回は青色申告により受けることができる特典の一部である欠損金周りについて紹介しようと思います。

欠損金の繰越し

まず、欠損金とは、会社が出した赤字のことを指します。設立初年度の場合、初期投資などでコストが嵩み、赤字になる会社が多くなるのが一般的です。

青色申告を行っている場合、この赤字を発生した年度から10年間に渡って繰り越すことができます。そして、繰り越している期間のいずれかで黒字が生じたときは、その黒字と繰り越した赤字を相殺することが可能になります(※1)。

欠損金を使用した場合と使用しなかった場合について、具体的な数字を用いて以下で解説してみます。

【ケース① 欠損金なしの場合】

設立初年度:赤字500円(白色のため繰越しなし)

設立2期目:所得1,000円×法人の実効税率30%(※2)=法人が負担する税額 300円

【ケース② 欠損金ありの場合】

設立初年度:赤字500円(翌期に繰越し)

設立2期目:(所得1,000円△欠損金500円)×法人の実効税率30%(※2)=法人が負担する税額 150円

上記のように、欠損金を有効活用することで、法人が負担する税額を軽減することが可能になります。

※1 中小法人に該当しない場合など、相殺できる欠損金の金額が制限されるケースもあるので留意が必要です。

※2 計算を簡便化するため、実効税率は30%としています。

欠損金の繰戻し還付

中小法人に限られますが、当期が赤字、かつ、前期が黒字となっていた場合、前期に支払った法人税のうち、発生した赤字に対応する部分の金額について還付を受けることができます。

具体的な計算方法は以下の通りです。

【計算式】 還付金額=還付所得事業年度の法人税額×(欠損事業年度の欠損金額(※2)÷還付所得事業年度の所得金額) ※2 分母の金額が限度額になります。 翌期以降も赤字が続くような場合など、上記の「欠損金の繰越し」よりもこちらの「欠損金の繰戻し還付」が有利となるケースがあるので、しっかり検討しましょう。