起業する際によく質問を受けるシリーズの第三弾として、事業年度の設定をどうすれば良いかについて、消費税が免除される期間と関連付けて紹介していきたいと思います。
消費税の免除
まず、消費税を納める必要がある会社(いわゆる課税事業者)とはどういう会社か。簡便的に説明すると以下のようになります。
「2期前の事業年度の課税売上が1,000万円を超える会社」
課税売上とは、住宅用不動産の賃貸を行っている会社などを除き、その会社の売上に相当するものと考えてもらって差し支えないかと思います。
ここで、2期前の売上で判定ということは、設立初年度と設立2期目はどうするのか疑問に思った方も多いでしょう。皆さんが想像された通り、2期前が存在しない設立2期目までの期間については、一定の会社を除き、消費税を納める義務がありません。ここで例外とした一定の会社とは、以下のいずれかに該当するものをいいます。
- 特定期間(※1)の課税売上高が1,000万円超、かつ、特定期間の給与支払総額が1,000万円超の場合
- 資本金の額が1,000万円以上の場合
- 資本金5億円以上の会社の子会社となっている場合
要件をご覧になってわかる通り、創業からある程度の規模で事業を行っている会社が例外規定の対象となっているため、世の中のほとんどの会社は設立2期目まで、消費税が免税されると思って頂いて差し支えないでしょう。
逆に、この例外に該当するような業態としては、飲食業などのように、人的リソースがある程度必要とされるものが想定されます。
また、一人社長の会社であれば、どの業態であれ、売上が1,000万円を超えたとしても、役員報酬を調整すれば済む話なので、そこまでハードルは高くないと思います。
※1 特定期間とは、その前の事業年度開始の日から、6か月の期間をいいます。
事業年度の設定
基本的に設立2期目までは消費税が免除されることを前提とすれば、初年度がなるべく12か月に近くなるように事業年度を設定することで、消費税の節税に繋がります。
例えば、4月15日に会社を設立するとすれば、決算日は3月31日が最も有効な事業年度設定となります。
会社設立の際、売上のシミュレーションを行い、あえて事業年度を中途半端に設定しているケースもありますが、これはあまりお勧めしません。
売上予想はあくまで予想なので、実際にその通りに売上が計上される保証はないからです。であれば、何も考えずに約2年間の消費税免除を選択する方が、よりリーズナブルだと思います。
最後に、消費税以外の観点からも一点補足します。会社が毎年支払う税金の中に、均等割というものがあります。これは利益が出ていなくても、会社が存在する限り、支払いが生じる税金になります。
ただし、事業年度が1年に満たない場合、月割計算をして税額を算定することになります。この月割計算をする際、1月に満たない端数を切り捨てることになるため、各月の1日以外を設立日とすると設立初年度は均等割の節税に繋がります(金額は僅少ですが)。