法人の節税シリーズⅠ ~自宅の社宅扱い~

日頃クライアントの皆さんと接する中で、一番ご興味を持って頂く・ご相談頂くことが多い事項が節税についてです。今回は一般的に行われている節税策を、シリーズものとしていくつか紹介していきたいと思います。

初回は、自宅を法人名義にする(社宅とする)ことによるメリットを取り上げます。

社宅扱いとするには

まず、自宅については①購入or②賃貸のパターンが考えられます。①の場合、多くの方はローンを組んで購入されるかと思いますので、個人の確定申告をする際、住宅ローン控除(40万円or 20万円)を適用されている方がほとんどではないでしょうか。①のパターンで社宅化を行ってしまうと、この住宅ローン控除を一部適用できないリスクがあるため、基本的に②賃貸をベースにこれからの話を進めていこうと思います。

社宅扱いとするには、いくつかのステップを踏む必要がありますので、以下で簡単に説明していきます。

  1. 賃貸借契約を法人名義で行う
  2. 賃料の支払いを法人で行う
  3. 一定の家賃負担を役員(自分)に課す(毎月の役員報酬から天引き)

基本的には、上記3つの要件を満たせば、自宅の家賃を法人の経費に計上することが可能となります。

一定の家賃負担とは

次に、上記3.で記載した一定の家賃負担について解説したいと思います。始めに、役員が負担すべき金額は、その社宅の㎡数をベースに以下の3つに分類されます。

  1. 小規模な住宅 ・法定耐用年数が30年以下の建物の場合には、床面積が132㎡以下である住宅 ・法定耐用年数が30年を超える建物の場合には、床面積が99㎡以下である住宅
  2. 豪華住宅 床面積が240㎡を超える住宅のうち、取得価額、支払賃借料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して判定します。なお、床面積が240㎡以下のものであっても、一般に貸与されている住宅等に設置されていないプール等の設備や役員個人のし好を著しく反映した設備等を有するものについては、豪華社宅に該当することとなります。
  3. 一般の住宅 上記1.又は2.に該当しない住宅

上記2.豪華社宅については、有利規定が設けられていないので、一般にその物件を借りるとした場合の適正家賃を負担する必要があります。

一方、上記1.小規模な住宅と上記3.一般の住宅に関しては、次に掲げるいわゆる「賃貸料相当額」を負担すれば、社宅家賃が給与課税されずに、経費として計上することが可能となります。

  1. 小規模な住宅 次の3つの合計額が賃貸料相当額になります。 ・(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2% ・12円×(その建物の総床面積(㎡)/3.3㎡) ・(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%
  2. 一般の住宅 ①自社所有の場合  次の2つの合計の1/2  ・(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12%※  ・(その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6%  ※法定耐用年数が30年を超える建物の場合は10% ②賃貸物件の場合  会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記①で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額